『2』を読んだ

 

2 (メディアワークス文庫)

2 (メディアワークス文庫)

 

 

いや予想を上回る衝撃でした。感想なんて何を書けばよいのやら。

 

『2』もこれまでの5部作と同様、一人称で語られる物語。主人公は役者志望の若者、数多一人(あまたかずひと)。カリスマ的人気劇団「パンドラ」の厳しい入団審査を乗り越え、無事劇団員としてスタートを切るが、その直後、異例の新人テストを受けに来た女性によってパンドラは解散に追い込まれる。そして数多はその女性に誘われて、一緒に映画を作ることになる・・・。

 

と、ここまで書けば多分5部作を読んだ人はこの女性が誰なのかはすぐわかるはず。というか、5部作を読んだ時点で『2』の主題が何なのか、誰が中心となる物語なのかは自ずと明らかなのだ。そして恐らく5部作のストーリーがこの『2』に絡んでくるのだろうな、と、5部作を読んだ人間には誰でもわかる。わかるのだが、そのつながり方がなんというかもう想像をはるかに超えるレベルなのだ。ラノベという形態、登場人物同士の戯画化された会話に騙されそうになるけれど、野崎まど、はっきり言って天才でしょこの人・・・。というか、5部作に連なるこんな本を書いてしまって、この後この人何を書くんだろう、どうするんだろう・・・と読み終わってしばらく呆然としてしまったくらいなのだが、そんな心配は全く凡人のもので、野崎まど自身はその後も作品を発表し続けているので、やっぱり天才としか言いようがない・・・。

 

ところで、これまでの5部作では「ここからが佳境!」というところで一旦本を閉じて一息つくことが多かった私だが、本作ではそんなことはなく大興奮しながら最後まで読み切った。「ここからが佳境!」というところで一旦本を閉じるという行為について、この前の感想では「戯画化された読みやすい文章でつるつる読み進めてしまうのだが、その調子で野崎まどの世界にはまり込んでそのまま最後まで突っ切ってしまうといきなり現れる闇に飲み込まれそうになるから、あえて一度その世界から抜け出ようとしているのかもしれない。」と分析していたのだが、今から思えば、5部作は全てかなり短い物語で、一方佳境が訪れるのはもうかなり最後、残りページ数が少なくなってきたところだから、ここで全部読み切ってしまうのが勿体ないという心理も大きく働いていたのかもしれない。あるいはこれまでの5部作それぞれの本の2倍以上の長さがある『2』では、一旦佳境を迎えてもまだまだ謎が多く残されていて、その謎が全部明らかになっていないのに途中でやめることなんてできなかったのかもしれない。

 

とにかく、読み終わってしばらく呆然としてしまうくらいのすごい小説だった。もう一度読んでしまった以上、知らなかった頃に戻ってもう一度この衝撃を味わうことはできないのだなあ・・・。