『狩人の悪夢』を読んだ

年が明けてやっと、仕事関連以外の趣味の本を読む余裕が出てきた。というわけで図書館で借りたのがこれ。

 

狩人の悪夢

狩人の悪夢

 

 

一昨年出版されていた、火村・アリスシリーズの最新刊。著者あとがきによると、このシリーズが始まってからもう25年らしい。ひえー。とは言え二人は変わらず30代前半で、火村は相変わらず京都の下宿に住んでぼこぼこの古いベンツに乗っていて、そしてアリスは売れているのかいないのか微妙なミステリ作家で、付かず離れずの二人の距離も相変わらずなのだけれど、それ以外の時は流れていて本書ではみんなスマホを使っていたりする。登場人物が年をとらない設定の長寿シリーズのご愛嬌であるな。

 

本書の舞台は京都亀岡。対談で知り合った売れっ子ホラー作家、白布施正都に誘われて、亀岡に住む白布施の住まいを訪ねたアリス。その部屋に泊まった者は必ず悪夢を見るという「悪夢の部屋」に一泊した翌日、かつて白布施のアシスタントだった渡瀬が住んでいた家で、右手が切断された女性の死体が発見される。発見されたのは、2年前に心不全でなくなった渡瀬の古い知り合い、沖田依子だった。壁についていた手の跡から、沖田の元彼で沖田のことを付け回していた大泉鉄斎が犯人の第一候補に挙がる。しかし大泉の捜索中、もう一軒の空き家で見つかったのは、左手が切断された大泉の死体だった。一体誰が犯人なのか。なぜ二人は殺されなければならなかったのか。二人の手首が切断されていたのはなぜなのか。その謎を火村がどう解くのか・・・。

 

一方、謎解き以外でも、この火村・アリスシリーズで気になるのが、火村が悪夢を見る理由が明かされるのか、そして明かされたとしてそれによって火村とアリスの関係性がどう変化するのか、というところ。前者については本書では特に進展はなかったものの、最後その火村の悪夢について言及するアリスと、それに答える火村の二人がなんだかいい感じで、じんわり来てしまった。もう私は二人よりもずいぶん歳を取ってしまったけれど、それでもずっとシリーズを読んでいると、火村が大学准教授ということもあって、なんだか以前から知っている友人のような気分になる。そういう感情をキャラクターに抱くことができるのは、シリーズものならではだよなあ。

 

火村・アリスシリーズを読むもう一つの楽しみが、基本となる舞台が関西で、知っている場所が出てくるところ。今回の舞台である亀岡には保津川下りで行ったことがある。白布施の待つ亀岡に向かう前に、白布施担当の編集者である江尻鳩子とアリスが待ち合わせをする京都駅JR嵯峨野線のくだりなんかは、実際の景色を思い浮かべながら読んだ。嵯峨野線は32番ホームだが、京都駅に30番以上もホームの数があるわけではなく、山陰本線の一部についた愛称が嵯峨野線で、山陰本線が発着するホームはサンにかけて30番台が振られているだけ、15番から29番線は存在しない、のだそうだ。知らなかった。

 

有栖川有栖といえば、国名シリーズの最新刊も出ていたんだった。

 

インド倶楽部の謎 (講談社ノベルス)

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読まねば・・・。