『波紋と螺旋とフィボナッチ』を読んだ

生物のパターン形成に関する研究で有名な、阪大近藤滋先生が一般向けに書かれた本。

 

波紋と螺旋とフィボナッチ (角川ソフィア文庫)

波紋と螺旋とフィボナッチ (角川ソフィア文庫)

 

 

「生物のパターン形成に関する研究で有名な」と書いたけれど、研究分野が違うのと不勉強なのとで、私が近藤先生のことを知ったのは、この著書の元となった「こんどうしげる生命科学の明日はどっちだ!?」を読んだのが最初だったと思う。私が見たのは近藤先生ご自身が運営なさっていたブログ(https://www.fbs-osaka-kondolabo.net/kondo-s-blog)のほうだったけれど、もともとは『細胞工学』のコラムとして連載されていたものらしく、その中の生物発生、パターン形成に関する記事をメインにまとめたのがこの本だ。

 

亀の甲羅の模様、二枚貝や巻き貝の殻の形、シマウマの模様、指紋、そして植物が作るらせん構造など、誰もが見たことのある生物の形、パターンを題材に、それらのパターン形成がどのように起きるのか、数理的にどのように説明できるのかが、近藤先生ご自身の研究も含めて解説されている。冗談交じりの軽い文体もあってとても読みやすいし、なにより、生物の形態がそんな簡単なモデルで説明できるんだ!?という驚きがある。特に第2章、巻き貝と二枚貝のような一見まったく違う形の生き物の発生が同じモデルで説明できるという話は、読みながらめちゃくちゃ興奮した。近い将来、動物の形態形成・発生に関する講義を受け持つ可能性があるんだけど(教務の先生に飲み会の席で打診されただけでまだ未確定)、もし本当に受け持つことになったらこの本はネタとしてかなり使えそうだな・・・。

 

第9章・第10章は近藤先生の青春期。パターン形成とはまったく関係ない免疫学の研究室に在籍しつつも、パターン形成への興味が捨てきれず、自宅で熱帯魚を飼い、魚の成長に伴うパターンの変化を観察してその成果をnatureに出版・・・っていやめちゃくちゃすごいな。こういう「周りの人がなんと言おうと自分の興味の赴くまま突っ走る」系の体験談ってすごくかっこいいんだけど、それだけ非凡な方なんだなあ、と我が身と照らし合わせてやれやれ感を覚えるのはまあいつものことである。

 

ところで「おわりに」によると、上述のブログ「こんどうしげる生命科学の明日はどっちだ!?」は、元は「業界の常識とか、変な風潮を皮肉りつつ笑い飛ばす」(p298)目的で書き始められたらしい。でも専門のパターン形成についての記事も書いてみたらそちらのほうが評判がよく、また近藤先生も書いていて楽しかったということで、次第にサイエンスがメインになったそうだ。私がメインで読んでいたのはパターン形成以外のほうの記事なんだけど、そちらもコラムとしていくつかこの本に掲載されていて、「ジンクピリチオン効果」の話とか「あ、これ読んだ読んだ!」となんだか懐かしくなってしまった。遺伝法則についてのメンデルの元論文(の和訳版)を読んでみた、というコラムも面白かったな。これ、いつか講義で使おう・・・。