『湖の男』を読んだ

学生さんに教えてもらった、アイスランドのミステリ。

 

 

学生さんがおすすめしてくれたのは二作目の『緑衣の女』だったのだが、シリーズものということを知って、この夏、一作目から通して読んでた。

 

湿地 (創元推理文庫)

湿地 (創元推理文庫)

 
緑衣の女 (創元推理文庫)

緑衣の女 (創元推理文庫)

 
声 (創元推理文庫)

声 (創元推理文庫)

 

 

アイスランド」と聞いての私の第一印象は「寒い・暗い・陰鬱」だったんだけれど、本作を読んでその印象をさらに強くした。主人公の捜査官エーレンデュルはくたびれた50代の男性で、子供の頃におきた事件から、雪山遭難に強い興味と執着を持っている。読書好きだが家にある本のほぼすべてが遭難関連の本。それを何度も読み直している。時々訪ねてくる娘は重度の薬物中毒で、エーレンデュルの同僚相手に傷害事件を起こしたりもする。小説の中で扱われている事件は、たいていがあまり恵まれない環境にいる人々の物語で、特に二作目の『緑衣の女』では陰惨な家庭内暴力が描かれる。全体を通して陰鬱な感じはかなり強く、例えばこの小説を読んで「アイスランドに住みたい」「行ってみたい」という気にはならないと思うだけれど、地道な捜査で一つひとつの点がつながっていって、最終的に事件の全体像が明らかになるという物語構成はミステリの王道で、毎作十分なカタルシスを味わうことができるし、エーレンデュルと娘のエヴァ・リンド、そして息子シンドリ・スナイルとの関係、三作目から出てきた恋人との関係がどうなるのか気になって、どんどん読んでしまう。

 

小説の中で垣間見える、アイスランドという全く知らない土地の文化や常識も興味深い。そもそも主人公エーレンデュルの職業「捜査官」って警察とはどう違うの?とか、同僚のエリンボルクは料理好きなのだが、三作目くらいでは料理本を出版して注目されたりしていて、副業全然オッケーなんだ、とか、捜査官の娘が麻薬中毒で傷害事件を起こしたりしたら、日本なら大問題になりそうなものだけれど、エーレンデュルが「世間体を気にする」様子が全くないのはきっと個人主義の国だからなんだろうなあ、とか。またあとがきによると、アイスランドではファーストネームで呼び合うのが一般的だそうで、「エーレンデュル」というのもファーストネームだそうだ。

 

アマゾンで調べたら、五作目も昨年出版されてたのか。

 

 

また寒そうなタイトルで・・・。読まなきゃ。