『進化の技法 転用と盗用と争いの40億年』を読んだ

現役シカゴ大学教授による一般向け科学書

 

生物の進化の過程と、その過程を明らかにしてきた科学者たちのお話。科学者たちの人となりやエピソードとともに、進化の仕組みが明らかにされてきた研究過程が語られていて、続きが気になってどんどん読んでしまう。ちょっと専門的な話は出てくるけれど、高校生物の教科書くらいの知識があればそれほど苦労せずに読めると思う。

 

様々な発見やエピソードについて、いちいち注釈はついていないのだけれど、その代わり巻末の「さらに勉強したい人のために」セクションで、各章で著者が参考にした本や論文を説明つきで紹介してくれている。進化生物学を学びたい大学生・学生・研究者(私みたいな)は、ここも必読(自分に言っています)。

 

本書の大部分では、著者の専門である発生進化生物学の事例が扱われているのだけれど、最後の章ではもっと前の話、細胞自体の進化についても触れられている。特に細胞内共生説のリン・マーギュリスについてかなり詳しく紹介されているのだが、この細胞内共生説については佐藤直樹先生の『細胞内共生説の謎』にも書かれていたように、マーギュリス以前にも同様の仮説を提唱した科学者がいたことも短く紹介されている。その上で著者は「かたや、恐れ知らずの姿勢と忍耐と創造力を兼ね備えていたマーギュリスは、自説を決してあきらめず、数十年間、証拠を積み重ねながら粘り強く訴え続けた」(p232)とマーギュリスの業績を高く評価していて、『細胞内共生説の謎』を読んで感じていたもやもやが晴れた気分だった。

 

norikoinada.hatenadiary.jp

 

著者のニール・シュービンは、Tiktaalik roseaeという、首・肘・手首を持つ魚の化石を発見したことで有名な進化生物学者だそうな。化石の調査・発掘から遺伝子解析、さらにはゲノム編集を用いた仮説実証まで行っている。現役でばりばり活躍中、昨年はnatureにも論文を出していた。

 

shubinlab.uchicago.edu

 

natureの論文はこちら。

www.nature.com

 

研究ばりばりやって、更にこんな一般書まで書いているのか・・・すげー。しかも本作は3作目だそうな。下、一作目と二作目。