『カエル教える生物統計コンサルテーション』を読んだ

統計学が苦手である。大学受験のときに統計学の授業も一応取ったけど、全然わからず点も取れなかった。全然わからず点も取れず、という経験をしたのは、物理と統計だけである。研究を始めてから、もちろん実験結果に対して統計処理をしないといけないことが多々あったわけだけど、そして何冊か統計の本も買って勉強しようとしたこともあったわけだけど、統計の本を開くたびに挫折して、結局は「同じような実験をしているこの論文で使っているから」といういい加減な感じで統計手法を選択して、人に聞いたりネットで調べたりしてExcelで解析してなんとかやってきた。つまり、統計に関しては、今までだましだましやってきた(だましだましやってきたのは統計に関してだけじゃない気がするけど・・・)。

 

しかし最近、割と統計ちゃんとわかってる先生と一緒に共同研究をしていてですね、ディスカッションに行った学生さんが帰ってきて「ここはこの解析法じゃなくて違う解析法のほうがいいのではないかと言われた」とか言ってくるんですよ。で、私もよくわからないからあんまりアドバイスできないんだけど、こんないい加減なことでは相手の先生に迷惑がかかってしまう・・・これは今こそちゃんと統計を勉強しないといけないのでは・・・しかしこれまでに買った統計の本を開いてみてもやっぱりよくわからない。なんか、「生物の統計、これだけ知っておけばいい!」的な本ないの?と、西梅田ジュンク堂を探していて見つけた本の一つ。

 

 

めっっっ・・・ちゃ勉強になった・・・。

 

主人公の統計学者、毛呂山先生(カエル)が、「自分の研究で基本的な統計解析はやったことがあるけれど、見様見真似でエクセルを使ってデータ解析しているだけで、本質的なところをあまり理解できていない」医学系研究室に所属する修士や博士課程学生、ポスドク、講師の統計解析に関する相談に乗るという対話形式の本。実験を組み立てる際の心構えから、生物学的データを統計解析するときの疑問のあれこれ、統計解析に使えるソフトウェア、そして最終的に解析した結果をプレゼンテーションする際の注意点まで学ぶことができる。B5版で200ページ弱、イラストも多いので読みやすい。

 

一方で、基本的な統計解析を知っている人を対象としてるので、統計学の基本的な用語説明とか統計解析手法の解説とかはあまり出てこない。また、こういうデータにはこういう方法で解析をすべき、みたいなマニュアルも出てこないので、最初に書いたような「生物の統計、これだけ知っておけばいい!」というような本では全くない。書かれているのは研究成果のデータを統計解析するときの心構え、統計の基本的な考え方、研究に対する姿勢で、ただ、統計学に対するそういう視点こそが私に全く欠けていたものだな・・・と本書を読んで気づいた次第。これまでほんと、「なんかそれっぽく見えればいい」くらいの、ツールの一つとしてしか統計学を見てこなかったからなあ・・・。この本を読んで初めて「統計学」の片鱗がわかった気になって、蒙が啓かれる思いでありました。

 

しかし最後の章で、毛呂山先生に「同じような研究テーマだからといって、方法論まで真似しなさい、というのは、そもそも科学者としての基本姿勢を疑います」と言われてしまったのはかなりきつかったですね・・・。それ私じゃん、と思って。これからは、とりあえず得られたデータが正規分布なのかそうでないのかをまず調べて、そして解析する際の「棄却したい帰無仮説」が何なのかを考えることにして、あとは統計の勉強ちゃんとしよう・・・。