『海外で研究者になる』を読んだ

ツイッターで見かけて興味を惹かれ、購入。

 

海外で研究者になる-就活と仕事事情 (中公新書)

海外で研究者になる-就活と仕事事情 (中公新書)

 

 

確か、奈良先端大のときからの知り合いで、現在は中国科学院・上海ストレスバイオロジーセンターでグループリーダーをなさっている河野洋治さんのツイートでこの本を知ったんじゃないかな?

 

著者である増田直紀さんは、東大工学部の助教・准教授を経て、イギリスの大学でジョブを得られた研究者。本書では、著者が就職活動をしていたときの経験とともに、海外でジョブを得た日本人研究者17人へのインタビューをもとにして、海外のアカデミアでジョブを得るにはどうすればよいか、海外のアカデミアは日本とはどう違うのかが詳しく紹介されている。本書のメインターゲットはおそらく「海外で働きたい若手研究者」なのだろうけど、カバーレターの書き方なんか、日本国内のアカデミアでジョブを得たい人にもすごく参考になると思う。私が就活をしていたときは、海外のジョブには応募しなかったけれど、国内でも英語ができる人を対象とした職で、履歴書やら研究経歴、teaching statementを英語で書かないといけないことがあった。そのときにこんな本があったらすごく助かっただろうな・・・。

 

インタビューされていた研究者17人は、分野や性別、就職した国がとても多様で、女性研究者の比率もかなり高い。夫婦で同じ大学にジョブを得たカップルの話もあったり、著者は人探しにかなりの労力を割かれたのではないかなあ。そのうちの一人が上にも書いた河野洋治さんなのだが、河野さんのインタビューでは、私も関わっていた奈良先端大の植物グローバル教育プロジェクトの話がちょっと出てきて感動してしまった。河野さんありがとうございます!

  

本書の後半は海外アカデミア組織についての紹介で、授業負担、休暇、交付金の有無や研究費の状況、お給料のことなんかについてもかなり詳しく書かれている。「海外でジョブを得る研究者」というと、私的には「サイエンスも地位もお金も」という感じの人を思い浮かべてしまうのだが、グアテマラの大学に就職したマヤ文明の古人骨の研究者では、グアテマラの大学はお給料も安く自由に使える研究費もなく、唯一のメリットが「研究対象と近いこと」だそうで、いろんな人がいるのね・・・と思った。また、場所にもよるけれど、海外は基本的に組織運営に関わる幹部の権力が非常に強く、いろんなことがトップダウンで決まるという話もとても興味深かった。幹部が暴走すると止められないという大きな欠点はあるものの、教員にとっては会議が少ないことはとても大きなメリットになる。日本も上の権限を強めてトップダウン型にしたいらしいけど、今のところほんと中途半端で、教員の負担はむしろ増える一方なんだよね。やるなら徹底的にやって、ついでに事務の数も増やして教員の雑用を減らしてほしいよ・・・。大学幹部の方、お役所の方々にもぜひこの本を読んでいただきたいな。