『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』を読んだ

『つけびの村』の高橋ユキさんが1月始めにこの本についてツイートしてらして、非常に興味をひかれたので本屋で購入。案の定面白くて一日で読み切った。

 

 

この本の主人公は2018年にエベレストで遭難して亡くなった登山家の栗城史多さんなのだが、私がこの方のことを知ったのは、亡くなってしばらくしてから、栗城さんについて書かれたブログ(どなたのブログだかも覚えていないのだが、この本の著者もブログで栗城さんについて書かれていたそうなので、もしかしたらそれだったかもしれない)を読んで、だったような気がする。そのブログは、どちらかというと栗城さんに対して批判的な感じではあったのだが、批判一方でもなく、栗城さんがどういう人だったのかどう表現していいのか迷っているという感じの書きぶりで、釈然としないながらも興味を惹かれたのを覚えてる。で、そのときの興味が高橋ユキさんのツイートで再燃した感じ。

 

この本では、栗城さんの生い立ちから、なぜ登山家になったのか、登山家になってからの活動、そしてエベレストで亡くなるまでの経緯が書かれていて、「で、結局栗城史多ってどんな人なの?」という疑問に引っ張られてどんどん読んでしまう。最終的に、「栗城史多ってどんな人?」という問に対する単純な答えが得られることはなくて、読み終えた今でもいろんな疑問が頭の中に渦巻いている。素敵な婚約者と別れて、凍傷で9本の指を失うまで自分を痛めつけて、それでもエベレストに登って、単に「有名になりたい」だけじゃそこまでできないと思う。彼は究極的には何がしたかったんだろう。

 

最終的に感じたのは、チープな結論だけど、「すごく孤独な人だったんだな」ということ(この本では「孤独」ではなくあえて違う言葉が結論として最後に使われていて、たしかにそちらの言葉のほうが栗城さんには合っているように思う。けどその言葉はこの著者のものなので使わない)。まあ人は皆孤独ですけどね。自分が究極的に何がしたいのか、何がほしいのかもわからないまま彼は死んでしまったんじゃないかな。まだ若くて、ビジネスの才能があると恩師からも言われていて、これから何にでもなれたのに。何がしたいのか、何がほしいのか、見つけてほしかったな。